看護師1年目で「辞めたい」と感じることは、決して珍しいことでも、あなたの適性が足りない証拠でもありません。慣れない業務、夜勤、責任の重さが一度に押し寄せる1年目は、多くの人が何らかの形でつまずきを経験する時期です。この記事では、感情的に「辞める・辞めない」を迫るのではなく、辞める/続ける/環境を変えるという3つの選択肢を冷静に比較できるように、判断材料を順に整理していきます。いま追い詰められた気持ちで読んでいる方も、まずは選択肢が複数あることを確認するところから始めてください。
1年目で辞めたくなる典型的な理由を整理する
「辞めたい」という気持ちの正体を言葉にできると、取るべき対処が見えやすくなります。1年目でよく挙げられる理由には、次のようなものがあります。
実際、日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」によると、2024年度の新卒採用看護職員の離職率は8.4%。おおよそ12人に1人が1年目のうちに職場を離れており、「辞めたい」と感じること自体は決して珍しいことではありません(出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。
- 職場の人間関係:先輩や指導者との相性、質問しづらい雰囲気、部署内の空気など。職場や部署が変われば解消されうる、環境依存度の高い悩みです。
- 夜勤・体力面のつらさ:生活リズムの乱れ、疲労の蓄積、体調不良。勤務形態の調整や慣れで軽くなる場合と、体質的に夜勤自体が合わない場合があります。
- 理想と現実のギャップ:思い描いていた看護と、日々の業務に追われる現実との落差。多くの新人が通る道である一方、職場の診療科や機能が自分の関心とずれていることが原因の場合もあります。
- 医療事故・インシデントへの不安:「自分のミスで患者さんに害を与えてしまうのではないか」という恐怖。責任の重さに対する感受性の表れでもあり、それ自体は看護職として自然な感覚です。ただし、不安が強すぎて日常生活に支障が出ている場合は、後述する相談先の利用を検討してください。
- 教育体制への不満:十分な指導を受けられないまま業務を任される、質問できる相手がいないなど。これも職場側の体制に起因する部分が大きい悩みです。
ここで確認したいのは、その悩みが「どの職場でも起こりうるもの」なのか、「いまの職場・部署に固有のもの」なのかという切り分けです。前者であれば環境を変えても繰り返す可能性があり、後者であれば異動や転職で改善する余地が大きいと考えられます。複数の理由が絡み合っていることも多いので、紙に書き出して仕分けしてみることをおすすめします。
「今すぐ辞める」以外の選択肢
退職はいつでも選べる選択肢です。だからこそ、その前に使える手段を確認しておく価値があります。
部署異動を相談する
悩みの中心が人間関係や診療科とのミスマッチにある場合、院内での部署異動によって状況が変わることがあります。師長や教育担当者との面談の機会に、いまの状況と希望を率直に伝えてみるのは一つの方法です。すぐに異動が実現するとは限りませんが、「困っている」と職場に伝わること自体が、指導体制の見直しなど別の改善につながる場合もあります。
休職・勤務調整という手段を知っておく
心身の不調が続いている場合、退職の前に休職や夜勤免除などの勤務調整という選択肢があります。休職制度の有無や条件は職場ごとに異なるため、就業規則を確認するか、看護部や人事部門に問い合わせてみてください。体調が理由の場合は、まず医療機関を受診し、必要に応じて診断書をもとに職場と相談する流れが一般的です。「休むこと」は逃げではなく、判断力を取り戻すための時間の確保でもあります。
院内外の相談窓口を使う
多くの医療機関には、教育担当者との面談、メンタルヘルスの相談窓口、産業医面談などの仕組みがあります。また、院外にも看護職向けの公的な相談窓口や、労働条件に関する公的な相談先があります。「相談したら評価が下がるのではないか」と心配になるかもしれませんが、一人で抱え込んだまま限界を迎えるより、早い段階で第三者の視点を入れる方が選択肢は広がります。

それでも辞めると決めたときの進め方
選択肢を検討したうえで退職を決めた場合は、感情ではなく手順で進めることが、自分を守ることにつながります。
退職のルールを確認する
退職の申し出時期は、就業規則で定められているのが一般的です。法律上は一定の期間をおいて退職の意思表示をすれば雇用契約を終了できるとされていますが、実際には職場の規定に沿って、余裕をもったスケジュールで申し出るのが円満な進め方です。年度途中の退職が可能かどうか、有給休暇の扱い、貸与物の返却なども含めて、まず就業規則を確認してください。個別の事情がある場合や、退職を認めてもらえないなどのトラブルがある場合は、公的な相談窓口や専門家に確認することをおすすめします。
「次を決めてから辞めるか」の判断軸
在職中に次の職場を決めるか、退職してから探すかは、次の観点で判断するとよいでしょう。
- 心身の状態:不調が強く、働きながらの転職活動が現実的でない場合は、回復を優先して退職後に探す選択にも合理性があります。
- 生活資金:収入が途切れる期間を何か月分の貯蓄でまかなえるかを具体的に計算しておきます。雇用保険の給付には受給条件や給付までの期間があるため、あてにする場合は事前に条件を確認してください。
- ブランクの説明:離職期間が長くなると、次の選考でその期間について質問されることがあります。休養や学び直しなど、説明できる過ごし方を意識しておくと安心です。
一般論としては、心身に余裕があるなら在職中に情報収集を始めておく方が、焦らずに選べる傾向があります。ただし、これは「限界まで働き続けるべき」という意味ではありません。
1年目での転職が不利になるケース・ならないケース
「1年目で辞めたら経歴に傷がつく」と言われることがありますが、実際には一律ではありません。
不利になりやすいケースとしては、退職理由を前向きに説明できない場合、即戦力を前提とした職場に応募する場合、短期間での離職を繰り返している場合などが挙げられます。採用側は「また早期に離職しないか」を懸念するため、その懸念に答えられない応募は通りにくくなります。
一方、不利になりにくいケースもあります。教育体制を整えて経験の浅い看護師を受け入れている職場を選ぶ場合、退職理由と次の職場で実現したいことを一貫して説明できる場合、心身の健康を守るためのやむを得ない退職である場合などです。基礎教育を受け直せる環境を選び、「なぜ次の職場なら続けられるのか」を自分の言葉で語れることが、1年目転職の成否を分けるポイントと言えます。
つまり、1年目での転職そのものが問題なのではなく、準備のないまま勢いで動くことがリスクなのだと整理できます。転職のタイミングを経験年数別に整理した記事も、あわせて参考にしてください。
よくある質問
辞めたい気持ちは誰に相談すればいいですか?
段階に応じて相手を変えるのがよいでしょう。まずは家族や信頼できる同期など、利害関係のない相手に気持ちを話して整理する。職場の環境を変えたい場合は師長や教育担当者に。心身の不調がある場合は医療機関や産業医に。労働条件のトラブルは公的な相談窓口に。「誰にも言えない」状態が一番選択肢を狭めるため、話しやすい相手からで構いません。
1年目で辞めたら、次の職場は見つかりませんか?
見つからないと決まっているわけではありません。経験の浅い看護師を教育前提で受け入れている職場は存在します。ただし選択肢は経験者より狭くなりやすいため、教育体制の確認と、退職理由・志望動機の整理は丁寧に行う必要があります。焦って条件の合わない職場に決めてしまうことの方が、その後のリスクとしては大きいと考えられます。
体調を崩しています。すぐに辞めてもいいのでしょうか?
心身の健康は仕事より優先されるべきものです。まずは医療機関の受診を検討し、休職や勤務調整など退職以外の手段も含めて、職場や専門家と相談しながら判断することをおすすめします。退職の手続きや時期については就業規則の確認が必要ですが、健康を大きく損なってまで我慢を続けることが正解とは言えません。一人で判断が難しいときは、公的な相談窓口の利用も検討してください。
まとめ
- 1年目で「辞めたい」と感じるのは珍しいことではなく、まず理由を書き出して「環境固有の悩みか、どこでも起こる悩みか」を切り分ける
- 退職の前に、部署異動の相談・休職や勤務調整・院内外の相談窓口という選択肢がある
- 辞めると決めたら、就業規則の確認から手順どおりに進める。次を決めてから辞めるかは、心身の状態と生活資金で判断する
- 1年目の転職は、教育体制のある職場選びと退職理由の説明準備ができていれば、一律に不利とは言えない
- 心身の不調があるときは、転職の判断より先に休養と受診を優先する
制度や法律に関する記載は一般的な説明です。詳細は勤務先の規定や専門家にご確認ください。
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