一人薬剤師の薬局で働いていると、「これは本当に許されている体制なのか」と疑問に思うことがあります。休憩も取れない、トイレにも行けない、休めば店が開けられない。結論から書きます。一人薬剤師であること自体は、違法ではありません。 ただし、薬剤師の人数には処方箋の枚数に応じた基準があり、開店している間は常に薬剤師が必要というルールもあります。この記事では、その基準の中身と計算の仕方を確認し、一人体制の職場で確かめておきたい点を整理します。

薬剤師の人数を決めている省令
薬局の人員の基準は、「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」に定められています。医薬品医療機器等法(薬機法)にもとづく厚生労働省令です。
同省令1条は、薬局の業務を行う体制の基準として、次のことを挙げています。
- 薬局の開店時間内は、常時、その薬局で調剤に従事する薬剤師が勤務していること(1号)
- 調剤に従事する薬剤師の員数が、1日平均取扱処方箋数を40で除して得た数以上であること(2号)
つまり、薬剤師の人数の基準は2つの面から決まっています。開店している時間は常に誰か薬剤師がいること、そして処方箋の枚数に見合う人数がいることです。
なお、1号にはただし書があり、薬剤師不在時間として定められた時間内は、薬剤師が薬局以外の場所でその薬局の業務を行うために勤務していればよい、とされています。在宅訪問などで一時的に薬局を空ける場合を想定した例外です。
「40枚に1人」の計算の仕方
2号の基準は、具体的な計算方法まで定められています。
1日平均取扱処方箋数は、前年の総取扱処方箋数を、前年に業務を行った日数で割って求めます。このとき、眼科、耳鼻咽喉科、歯科の処方箋は、1枚を3分の2枚として数えます。前年に業務を行った期間がない、または3か月未満の場合は、推定によるとされています。
その1日平均の数を40で割った数が、必要な薬剤師の員数です。1に満たないときは1、端数が出たときは切り上げて1とします。
計算例を挙げます。
| 1日平均取扱処方箋数 | 40で割った数 | 必要な薬剤師の員数 |
|---|---|---|
| 30枚 | 0.75 | 1人 |
| 40枚 | 1.0 | 1人 |
| 41枚 | 1.025 | 2人 |
| 70枚 | 1.75 | 2人 |
| 100枚 | 2.5 | 3人 |
1日平均が40枚以下なら、基準の上では1人で足ります。41枚を超えると、2人以上が必要になります。 眼科や耳鼻咽喉科の門前であれば、処方箋の換算が3分の2になるため、実際の枚数はもう少し多くても1人の基準に収まります。
基準を満たしていても、つらい理由
ここまで読むと、「基準は満たしているのだから仕方がない」と感じるかもしれません。ただ、省令の基準は、薬局を開設し続けるための最低限の線です。働く人の負担がそれで適正になる、という意味ではありません。
一人薬剤師の職場で起きやすいのは、次のようなことです。
休憩が取りにくいこと。労働基準法34条は、労働時間が6時間を超えれば45分、8時間を超えれば1時間の休憩を求めています。一方で、開店時間内は常に薬剤師が必要です。一人しかいなければ、休憩の間は誰が調剤を担うのか、という問題が出ます。休憩中も患者が来れば対応する前提であれば、その時間は休憩とは言えない可能性があります。
休めないこと。一人の薬剤師が休めば、開店時間内に薬剤師がいない状態になります。有給休暇の取得や急な体調不良のたびに、代わりの手配が必要になります。
判断を一人で負うこと。疑義照会や監査を、ほかの薬剤師と確認し合えません。
基準を満たしているかどうかと、働き続けられる体制かどうかは、分けて考える必要があります。 有給休暇が取れない問題は人手が足りず、有給休暇が取れませんで、入社前の説明と体制が違う問題は実質一人薬剤師で不安ですで整理しています。
一人体制の職場で確かめること
いまの職場、またはこれから応募する職場について、次の点を確かめてください。
- 1日平均の処方箋枚数はどのくらいか。40枚を超えていないか
- 休憩の時間、薬局をどうしているか。閉局するのか、応援が来るのか
- 薬剤師が休むとき、誰が代わりに入るのか。応援の手配は誰の仕事か
- 在宅訪問などで薬局を空ける時間は、どう決まっているか
- 疑義照会や監査で迷ったとき、相談できる薬剤師はいるか
**処方箋の枚数が40枚を超えているのに薬剤師が1人しかいない状態が続いている場合は、省令の基準から外れている可能性があります。**まず管理薬剤師や本部に、体制について確認してください。判断に迷う場合は、所轄の保健所が薬局の体制を確認する窓口になります。
一人体制そのものが合わないと感じるなら、職場を選び直すことも正当な判断です。面接では、薬剤師の人数を「何人体制ですか」だけでなく、「開店時間中、薬剤師が1人になる時間はありますか」と聞くと、実態が分かります。
よくある質問
一人薬剤師で休憩が取れません。違法ですか
労働基準法34条は、労働時間に応じた休憩を労働時間の途中に与えることを求めています。休憩中も患者対応を求められる状態であれば、その時間は休憩とは言えない可能性があります。休憩の時間に閉局しているのか、応援が来るのかなど、実際の運用を勤務先に確認してください。
処方箋が1日50枚あるのに、薬剤師は私1人です
省令の基準では、1日平均の処方箋数が40枚を超えると、調剤に従事する薬剤師は2人以上必要になります。眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は3分の2枚として数えるため、内訳によって結果が変わります。前年の実績にもとづく1日平均で判断されるので、まず管理薬剤師や本部に確認してください。
薬剤師不在時間とは何ですか
開店時間のうち、薬剤師が在宅訪問などで一時的に薬局を不在にする時間のことです。省令は、薬剤師不在時間内は、薬剤師が薬局以外の場所でその薬局の業務を行うために勤務していればよいとしています。この時間の扱いには、ほかにも定められた条件があります。
まとめ
- 一人薬剤師であること自体は違法ではない
- 薬局の体制を定める省令は、開店時間内は常時調剤に従事する薬剤師が勤務すること(1条1号)と、1日平均処方箋数を40で割った数以上の薬剤師を置くこと(同2号)を求めている
- 1日平均は前年の実績で計算し、眼科・耳鼻咽喉科・歯科は3分の2枚で数える。40枚を超えると2人以上が必要
- 基準を満たしていても、休憩・休暇・判断の負担は残る。基準と働き続けられる体制は別に考える
- 処方箋枚数、休憩時の運用、休むときの代わり、相談できる相手を確かめる
参考にした一次資料
本文の条文は、これらの原典を編集部が直接確認したうえで引用しています。
制度や規定に関する記載は一般的な説明です。個別の薬局の体制については、勤務先や所轄の保健所にご確認ください。
関連記事: 実質一人薬剤師で不安です。『2人体制』と聞いて入社したのに話が違います【薬剤師のお悩み相談】
関連記事: 人手が足りず、有給休暇が取れません。一人薬剤師の店舗では諦めるしかないのでしょうか【薬剤師のお悩み相談】
関連記事: 管理薬剤師が3か月不在のまま、私が管理者の仕事をしています。このままで大丈夫でしょうか【薬剤師のお悩み相談】


