薬剤師お悩み相談

管理薬剤師になったら残業代が出なくなりました。「管理職だから」と言われましたが、本当でしょうか【薬剤師のお悩み相談】

管理薬剤師手当の書類と時間外勤務の記録を比べる薬剤師と、相談・回答の二つの吹き出し

相談内容

調剤薬局で働いて7年目、半年前に管理薬剤師になりました。月3万円の管理薬剤師手当が付いた代わりに、残業代が出なくなりました。本部に聞くと「管理薬剤師は管理職なので、残業代の対象外です」との説明でした。ただ、薬剤師は私を含めて2人で、シフトは本部が決めます。採用や給与に関わることもありません。閉店後の薬歴や在庫の作業で、残業は月30時間ほどあります。手当より、なくなった残業代のほうが多い計算です。管理薬剤師は、残業代が出ないものなのでしょうか。

※ 相談内容は、よく寄せられる悩みをもとに編集部で再構成したものです

編集部の回答(結論)

管理薬剤師だから残業代が出ない、とは限りません。薬機法が定める薬局の「管理者」と、労働基準法で労働時間の規定が外れる「監督若しくは管理の地位にある者」は、別の法律の別の制度です。名前が管理薬剤師であることではなく、働き方の実態で決まります。ご相談の状況を見るかぎり、会社の説明をそのまま受け入れる必要はありません。まず根拠を書面で確認してください。

「管理薬剤師は、残業代が出ないものなのでしょうか」。先に答えます。そうとは限りません。会社の説明には、2つの別々の制度が混ざっています。薬局の管理者であることと、労働時間の規定が適用されない立場であることは、根拠になる法律も、判断の基準も違います。この記事では、その2つの違いを条文で確認し、どんな点で判断されるのか、会社にどう確認するかを整理します。

2つの「管理」は別の制度

管理薬剤師という名前の根拠は、医薬品医療機器等法(薬機法)7条です。薬局には管理者を置くことが義務づけられていて、その管理者が管理薬剤師と呼ばれています。同法8条は、管理者の役割を、従業者の監督、構造設備や医薬品の管理、業務についての必要な注意と定めています。これは、薬局という施設を保健衛生の面で適切に運営するための役割です。

一方、残業代に関わるのは労働基準法です。同法41条2号は、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」について、労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないと定めています。会社の言う「管理職だから残業代の対象外」は、この規定を指していると考えられます。

薬機法の管理者であることは、労働基準法41条の管理の地位にあることを意味しません。 条文のどこにも、2つを結びつける定めはありません。薬局を管理する責任を負っていることと、労働時間の規制から外れるほどの立場にあることは、別々に判断されます。

何で判断されるのか

労働基準法41条2号の対象になるかどうかは、肩書きではなく実態で判断されます。一般に見られるのは、経営者と一体的な立場で仕事をしているか、という点です。具体的には、次のような事情が問われます。

  • 採用、配置、人事評価など、労務管理について決める権限があるか
  • 自分の出退勤や働く時間を、自分の裁量で決められるか
  • その立場にふさわしい待遇を受けているか

ご相談の内容を当てはめてみます。シフトは本部が決めている。採用や給与には関わっていない。手当は月3万円で、なくなった残業代のほうが多い。3つの点のどれを見ても、労働時間の規制から外れる立場だと説明するのは難しい状況です。

もう1点、確認しておきたいことがあります。41条が適用を外しているのは「労働時間、休憩及び休日に関する規定」です。仮に管理の地位にあると判断される場合でも、何もかもが対象外になるわけではありません。どの手当が出て、どれが出ないのかは、会社に具体的に確かめる必要があります。

手当と残業代を比べる

感覚ではなく、数字で比べてみてください。

管理薬剤師になる前の給与明細を出して、残業1時間あたりの単価を確かめます。それに月30時間を掛けた額が、いま受け取れていない残業代のおおよその見積もりになります。この額と、月3万円の手当を並べてください。

手当のほうが少ないなら、管理薬剤師になったことで、責任は増えて手取りは減っていることになります。これは、会社と話すときの具体的な材料です。「納得がいかない」と伝えるより、「以前の残業代は月◯円、現在の手当は3万円で、差額が◯円あります」と伝えるほうが、話は進みます。

あわせて、残業の記録を残してください。出勤と退勤の時刻、閉店後に行った作業の内容を、毎日メモしておきます。薬歴の入力時刻やレセコンのログなど、客観的に残っているものがあれば、その存在も控えておきます。

会社への確認の順番

いきなり「違法ではないか」と切り出す必要はありません。確認として尋ねるところから始めてください。

最初に、根拠を書面で示してもらいます。「管理薬剤師が残業代の対象外になる根拠を、就業規則の該当箇所で教えてください」。就業規則や賃金規程に、管理薬剤師の扱いがどう書かれているかを確かめます。

次に、手当の性質を尋ねます。月3万円の手当に、一定時間分の残業代が含まれているという扱いなのか、役職への対価なのか。含まれているのであれば、何時間分なのかが明示されている必要があります。

そのうえで、実態を伝えます。シフトを自分で決めていないこと、人事に関わっていないこと、手当より残業代のほうが多かったこと。事実を並べて、扱いの見直しを求めてください。

会社の中で進まない場合は、労働基準監督署に相談できます。割増賃金は労働基準法37条に定められた事項で、監督署の所管です。就業規則の該当箇所、給与明細、残業の記録を持っていくと、話が早く進みます。

管理薬剤師を続けるかどうかも、この機会に考えて構いません。責任と待遇が見合わないまま続けることが、いちばん消耗します。引き受けるかどうかの考え方は管理薬剤師を経験3年で打診されましたに、辞めたいときの整理は管理薬剤師を辞めたいのに「後任がいないから無理」と言われたらにまとめています。

同じ状況にいる方へのチェックリスト

  • 管理薬剤師になる前の給与明細で、残業1時間あたりの単価を確かめたか
  • なくなった残業代の見積もりと、管理薬剤師手当の額を並べて比べたか
  • 出退勤の時刻と、時間外に行った作業を毎日記録しているか
  • 就業規則と賃金規程で、管理薬剤師の残業代の扱いを確認したか
  • 手当に残業代が含まれる扱いなのか、何時間分なのかを尋ねたか
  • シフトの決定、採用や評価への関与など、自分の権限の実態を書き出したか
  • 会社への確認を、メールなど記録に残る形で行ったか
  • 社内で進まない場合の相談先(労働基準監督署)を調べたか

制度や規定に関する記載は一般的な説明です。個別の状況については、労働基準監督署などの公的窓口や専門家にご確認ください。

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執筆

白衣キャリア編集部

看護師・薬剤師の転職と働き方に関する情報を、中立の立場で整理して届ける編集チームです。記事は編集方針に基づいて制作し、公開前に法令・広告表示のチェックを行っています。制度・統計に関する記述は一次情報を確認のうえ掲載し、公開後も定期的に見直しています。運営会社: 株式会社プロフィット(運営担当: 内藤 啓)

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